2017/11/01にKADOKAWAから発売された
『エンターテインメントという薬 -光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-』
(以下、エンタメ薬)
タイトルからして、よくある “お涙頂戴本” かな?と思われる方も多いと思いますが
この本は、
ただのお涙頂戴本とは違います。
今回は、そんな 心打たれた『エンタメ薬』について書いていこうと思います。
福岡のゲーム会社の社長の本
この本を手に取ったのは、単純な共通点 “福岡” というのが一番大きかったと思います。
福岡という同郷に本社を構えるゲーム開発会社 サイバーコネクトツー
『NARUTO』や『ジョジョ』などの誰もが知るようなゲームを手がけている実力のある会社です。
『エンタメ薬』は、その会社の社長が実際に体験したノンフィクションのお話だというのです。
タイトルからおおよそ
「目の病気を持つ人にゲームで希望を与えたのかな」
ということは想像できますね。
しかし、この本は、タイトルから想像できる内容の何倍もの中身が詰まっていたのです。
あなたに質問です
あなたに質問です。
これからあなたは目が見えなくなります。そうです。何も見えません。きっちり猶予は3週間。そう、3週間後にあなたは目がまったく見えなくなるのです。親しい友人の顔も、大好きな家族の顔も、何も見えなくなってしまうのです。
さあ、残された時間で、あなたは何を見たいですか?
引用元:『エンターテインメントという薬 -光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-』
これは、この書籍の冒頭に書かれているフレーズです。
私は……すぐには何も思いつきませんでした。
想像してみると
「え、いや、え、見えなくなる?
見たいもの
大好きな乃木坂46とか欅坂46、TWICEのメンバーの顔か?(やばいヲタ発動した。
しかし、それは残り3週間で、この目で、目の前で見たいものなのか?
絶対そうなのか?
残り3週間の時間で、本当にそれを見たい???
いや、そうじゃないのかもしれない……
とりあえず、家族の顔?
なんか、顔ばっかりだな。景色とかは?ん~~~意外と興味ない(笑)」
なんて、色々な考えが頭を巡りました。
もちろん、この本を読んでから幾日も経っている今でも
「これだ!」
という答えには至りません。
しかし、この衝撃的な問いは、実際にある少年が医師に宣告されたものです。
そして、多くの方は想像できていると思いますが
その少年が
残された3週間でサイバーコネクトツーが開発している最中の
「ゲームを遊びたい」
と言ったそうです。
物語はここから始まります。
想定外の連続。業界のタブー。エンターテインメントとは。
さて、この本の内容。
目が見えなくなる少年にゲームを届けて希望を与えた話。
ではないんです。
びっくりされる人が多いと思うのですが、ゲームを届けるのは、序章です。
さっきも言った通り、そこから物語は始まるのです。
少年にゲームを届けてから 10年経った今 明かされる当時とその後のストーリー。
- 想定外の連続。
目が見えなくなった少年の話。
目が見えない人はどう生活しているのか?働いているのか?
この本から、私たちがいかに想像だけで偏見を抱いているのかが分かります。
さらに、驚くべきは、目が見えなくなった少年よりも
そのお母さんだったりなんて……
- 業界のタブー。
目が見えなくなる少年がやりたいと言ったゲームは
わざわざ社長に伝わるんですもん
そうです。
発売前のゲームです。
『.hack』というシリーズのゲームで
少年はその『.hack//G.U. 』の最終章である
『.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで』を
プレイしたい。
物語の完結をこの目で見たい。
ということだったのです。
しかしですよ?
発売前のものを一般人に公開するというのは……
そういう人が何十人も出てきたら全部に対応するのか???
この一例を作るだけでもそういった企業としての心配が出てきます。
さらに、プレイステーションを作っているソニーへの申請やバンダイナムコという大きな会社としての動き、渡した少年との機密保持の契約は?情報漏洩は
前例、実績、申請、契約、許諾、著名、許可、規制……
色々な言葉が会議で飛び交います。
そんな中、動いた男がいたのです。
それは、
是非、あなたの目でこの本を読んで確認してみてください。
- エンターテインメントとは。
エンターテインメントってなんでしょうね。
少し質問を変えてみましょうか
例えば、ゲームというエンターテインメント。
ゲームって生きるために絶対必要ですか?
たぶん、絶対必要ではないです。
3週間後に目が見えなくなると言われたらゲームと答えますか?
たぶん、私はそう答えないでしょう。想像もできないですけどね。
しかし、エンターテインメントっていうのは、大きな力があるんですよ。
ネタバレしちゃいたいくらい言いたいものです。
この本は、みなさんの目で読んでほしい。
強くそう思うので、なるべくネタバレは無しでいかせてもらいました。
是非、みなさんも読んでみてください。
そして、著者である松山さんの熱い思いを感じ取ってみてください。
また、以下リンクで
「ファミ通に寄せられた感想&本の冒頭6ページが公開」されています。
コチラから確認できます。
『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズや『.hack』シリーズの開発で知られる株式会社サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏によるノンフィクション。
本書は、2006年12月、プレイステーション2用ソフト『.hack//G.U. Vol.3 歩くような速さで』発売直前に松山氏に入った1本の電話をきっかけに、ひとりの少年に出会うところから始まります。
その電話は、目の病気のため眼球摘出手術を受ける少年が、『.hack//G.U. Vol.2 君想フ声』の続きを遊びたい、と望んでいることを告げるものでした。ソフト発売は、手術の9日後。このままでは間に合わない――! そこで、視力を失う少年のもとへ直接ROMを届けに行くという、異例の対応を行った松山氏。10年前当時のことを振り返るとともに、この対応の裏で多くの関係者が動いてくれたことや少年の半生などをこまかに取材し、執筆しました。
ゲーム、エンターテインメントにできることって何だろう? 松山氏とその少年との出会いが、当時の開発スタッフに勇気と希望を与えるものであったこと、そして、エンターテインメントに関わるすべての人々へ伝えたい想いを込めた1冊です。本書の売上の一部を“がんの子どもを守る会”に寄付いたします。
引用元:『エンターテインメントという薬 -光を失う少年にゲームクリエイターが届けたもの-』 amazon